魚座とアシンメトリー - side by side 制作後記的なものです
こんばんは。私です。
先の2020年秋M3におきましては、難しい情勢の中、弊サークルも多くの方にお越しいただきました。本当にありがとうございました。
当日新譜をお渡しさせていただいた方には既に押し付けさせていただいておりますが、今回(弊サークルとしては)初の試みとして、会場限定でライナーノーツのようなものの作成・配布をさせていただきました。当記事は、その詳細版と申しますか、書いてみたら意外と字数制限厳しいなもっと書かせろという自分の要望に応えるためのものです。
あと、あんまり学術的な音楽の話はできていませんが、そういった部分につきまして、イルリキウム大先生がご執筆された本作のレビュー記事に分かり良い解説がございますので、ぜひぜひご覧ください…!(丸投げ)
ゲストコンポーザーとテーマ決めに関して
弊サークルは毎回テーマを定めて新譜を制作しています。コンセプトアルバムが好きという根源的な理由と、テーマがないと曲が作れないという僕の病気によるものです。
ここが一番難産でした。前回までで作りたいテーマを出し切ってしまっていたのです。いくらヒーヒーフーフー言っても出てきませんでした。
いくら力んでも出てこなかったので助産なまずに助けを求めました。そうです、彼です。
【おしらせ】
— なまおじ (@namaozi) 2020年10月19日
サークル『魚座とアシンメトリー』さんの秋M3新譜の
Tr2「ハッピー・ホリデー・エクスプレス」作詞作編曲
Tr3「セミロング」作編曲
担当させていただきました!
ファンで聴いてた魚アシさんで曲出す日が来るなんて感慨深い…😭✨🙏
よろしくお願いします〜🐟 クレジット下に続きます↓ https://t.co/4Ajr9WcfhV
彼との馴れ初めに関してはそれで一記事作れるので割愛しますが、畏れ多くも僕が生きてきた中で一番親しくしているなまずです。なまず界は広いと聞きますが、彼ほどイカしたなまずにはなかなか会ったことがありません。謝辞を申し上げます。
声を掛けた理由としては、仲間内でのコンピ盤*1に寄せていた彼の曲がめっちゃよかったからというのはあるんですが、何の酔狂か「魚座とアシンメトリーが好きである!」という表明を幾度となくしてくれていたことと、「ボーカル曲を作りたい!」と口にしていたのを覚えていたから、というのが大部分です。彼はイカしたなまずなので、辞書に載せられるほどの快諾を辞書に載せられるほどの二つ返事でしてくれました。
作戦会議は確か6月頃にスタートしたかと記憶しています。情勢の安定も程遠く、ナウでヤングなオンライン会談により、この共謀-コンスピラシー-は幕を開けました。
テーマに関しては、確かなまおじさんがこんなんええんやないですかって言ってくれた気がします。いろんな場面でのいろんな女の子たち「ふたり」をそれぞれ曲にしよう、と。
これは僕が毎回「女の子の設定をガチガチに決めてそれを曲に落とし込む」っていう架空のキャラソン作るみたいなをしてるんだよ~って話を相談がてらして、じゃあそれを今回も採用しつつ、全体通しで聴いた時の方向性はゆるやかに定めておこうということでこうなりました。
ジャケットイラストに関して
今回のジャケットイラストは、小倉さんに依頼させていただきました。
#芸カ23
— 小倉🌸芸カ/カ36 (@Onigiritakusan) 2020年11月21日
アイカツのおえかきブックをつくりました。フルカラー20P 500円です。カ-36です!
可愛いシールと色紙もあります。
よろしくお願いします! pic.twitter.com/wdoGe6YTzf
お願いをした理由を挙げればきりはないんですが、まず以てアイカツのオタクは信用がおける(当社比)というのがあります。
今回は「ふたり」がテーマということもあり、なにはともあれ女の子を二人描いていただこうというのが前提としてある中で、更に突き詰めると、4曲の中で様々な「ふたり」の関係性が描かれる都合上、単に目に見えて仲良しそうなというよりはいろいろな受け取り方ができるような「ふたり」を描いてほしいなあというのがありました。
それは時に「あかスミ」であり「ゆめこは」であり「エルらき」であります(国会答弁)。つまりアイカツのオタクに「ふたり」の関係性を描かせるのは適任なのです。Q.E.D.
具体的な指示としては、前述通り押し付けがましく仲良さそうという感じではないというのをお伝えするために、フリッパーズ・ギター、プチミレディのMV・アー写をいくつかご提示させていただきました。それぞれ一人でもいろいろできるけど、二人でしかできないことはそれはそれとしている二人組が好きなんだと思います(パーフリはいつまで待っても再結成とかしてくれませんが)。
www.youtube.comいつでも一緒ではないけれど、だからこそ生まれる二人でいることの意味や価値ってあるわけでして、これは個人の感覚になりますが、そういうことを思わせてくれる素晴らしいイラストに仕上げていただけて本当に嬉しいなあ、というようなことを考えています。
あと、これはCD版をご購入いただいた方にしか共感が得られない部分で恐縮なんですが、上記のような関係性がありつつ歌詞カード裏面みたいな一面もあって…みたいなのがめちゃくちゃ好きでして…。すいません、春M3までにはCD版増刷すると思うので是非買って見てください…。
#1 ティルナノーグ・プロローグ
Lyrics:桜木うみ
Music/Arr.:掛川
Guitars:なっさん
☆キャラクターメモ「元気で周りを巻き込んでいけるような明るい女の子」
この曲の元ネタになった女の子に関しては、僕が詞を桜木うみさんにお願いした際のメモをご覧ください。
「明るくて思慮深くて家事全般こなして陽キャ陰キャ別け隔てなく接せられる全人類が見習うべきすごくいい子」
誰のことだか知りませんが本当にいい子ですよね。うん。
明るくて楽しい子が担う一曲目なので「んんwww曲調はテンポ早めのソフトロック以外あり得ないwwww」って僕の中の気持ち悪いオタクがそう言いました。だからこうなりました。
こういう曲調については、個人的に好きでよく「ソフトロック」って言葉で言うんですが、たぶん凡そ一般では「渋谷系」とか「ネオアコ」とかそういう言い回しの方が浸透してる風なものだと思います。ここに関しては我らが沖井礼二氏も表現しあぐねている節があるようです*2。
歌詞について
詞は前述通り桜木うみさんにご依頼しました。これは何の捻りもない話ですが、氏の別名義での歌詞を拝見させていただいた時の感動から「いつか絶対に詞を依頼しよう」って決めてた節があり、今回お願いする運びになった具合です。
氏におしゃれ/かわいい歌詞書かせたら負けなしだと思います。何を隠そう僕は白旗を上げました。ひとつひとつの単語の選び方、乗せ方、ライム的な手法の使い方、どこをとっても、曲の世界・解像度を引き上げるのに一役買ってくれたことは間違いありません。
更に付け加えるとすれば、「既存の魚座とアシンメトリーの世界観」を重要視した上で制作に取り組んでいただいた部分についても、ぜひ申し上げておきたいことです。お願いする限りはその方の色のようなものが欲しい、でも今まで作り上げてきたものの要素も欠かしたくないという欲張りなことを思い描いて依頼をさせていただきましたが、それが成されたかは、おそらくみなさんも(過去作からご愛顧いただいている方は特に)お分かりの通りです。
「プリマステラ(=一番星)」の輝きを追って活動を始めた魚座とアシンメトリーに、こうしてまた「金星(=一番星)のウィンク」が…っていう伏線回収的なの、最高じゃないですか…?(一オタク目線)
あと個人的には「さぁ 願いを叶えたまえ!」っていう一節を入れてくれたことが、ただただ嬉しかったですね…。
ギターについて
ギターはなっさん氏です。彼にもいずれ絶対なんか依頼しようとは前々から思っていて、曲ある程度作った段階で「これはお願いしたいなァ~!」って個人的にめっちゃ思えたので依頼しました。
どんな音楽性を持った方かは所属バンドの曲と彼個人の曲を聴いてもらえれば、ますます分からなくなること請け負いです。
今回はある程度僕の方で仮ギターみたいなのを弾かせていただいた上で、ここから入れたいところに単音フレーズやらアルペジオやら思うままに入れていただいて構いません的なお願いをしました。あと「かっこいいギターソロ」もお願いしますと。
そこからのバランス感覚が最高で、入れていただきたい部分にいい塩梅でフレーズやら動きやらを加えていただいたのが、みなさんにお聴きいただいている本稿です。前述の雑な指示からよくやっていただいたなと思うばかりです…。
特にギターソロ…。非常に味わい深い好いソロだと思いませんか?1:49のチョーキング加減とかゲイリー・ムーアのそれと聴き紛う…。いただいたタイミングから今まで聴く度に「その手があったか!」と膝を打ちっぱなしで膝めっちゃ痛いです。
個人的な制作に関する部分
僕の言える範囲の技術的な話だと、ベースをまあまあがんばりました。
指弾きが一切できない(訳:好きなベーシストがピック弾きばっかりでそっちばっかり練習してたら指弾きができなくなった)ということが予てよりのお悩みだったので、なにくそにゃー!!まだ成長するかもらー!!(まぞく)と発起し一年くらい前から練習した結果がこちらです。
今回から昔使ってたコンパクトエフェクター類の活用もはじめました。なんとなく「プラグインで全部後掛けできるんだから、録り音段階ではドライであればあるだけいい」みたいな考え方があったんですが、「録り音の段階から整ってりゃミックス楽になるしいい音になるのでは…?」という気づきがあり(馬鹿)、今回僕が弾いた曲はベースもギターもコンパクトのコンプレッサー→プリアンプを通した上でオーディオI/Fに繋いでいます。ギターに関しては別にどっちでもよかったかなって気でいますが(あんま弾いてないし)、ベースはめっちゃよくなったなと思っています。
あと音作りは去年何となくで買ったバイアスアンプ2が思いのほかよいものだったので、僕が弾いてる竿楽器は全部バイアスアンプで音作りました。ベースはSVT-VRのシミュがめちゃくちゃ気に入ってて、この曲ではそれを使いました。
#4 heliotrope
Lyrics/Music/Arr.:掛川
Guitars:外舘大貴
☆キャラクターメモ「形にならなかった感情を抱えたまま、自分からは離れることもできない」
自分の歌詞の解説するのは無粋かなとは思うんですが、最低限説明すると、そういう関係でもなく何となく一緒にいたふたりがいざ離れるっていう場面の曲です。
曲調としては、'00年代の邦4ピースロックバンドの曲みたいな感じです。一曲目以上にジャンル名がわからないです。1~3曲目がどちらかと言えば陽の曲だったので、最後くらい程よく鬱撒き散らして帰るかァ!っていうはた迷惑な思想によりラストナンバー枠での採用となりました。
歌詞について
僕が書きました。悲恋が我が三度の飯なのでとても楽しく書きました。
「傷つかないまま嘘になり 痕だけ残して消えていく」って部分は、書いててうっわあどうしようもねえ…って思いながらもめっちゃくちゃ気に入ってます。
ギターについて
制作途中までは全部自分で弾こうと思ってある適度録音をしていたんですが、思いの外(演奏技術面で)想像通りにいかんぞまいったまいったとなり、尊敬すべき大学時代の先輩である外舘さんの力をお借りすることで解決しました(今回外舘さんには図らずもミックス周りのご指導も請わせていただいてまして、本当に頭が上がりません)。
Tr.1と同じく、仮ギターのようなものをこちらでご用意させていただき、ここはこのままを清書する感じ、ここは気に入ってないのでいい感じのを…という雑極まりない依頼をさせていただいております。
ちなみに外舘さんにお願いしたのは左チャンネルで鳴ってるリードっぽいパートとソロパートで、右チャンネルで鳴ってるバッキングは僕で弾いてます(後述)。
氏は知り合った頃は完全にパワーメタル/エモスクリーモのお兄さんだったんですが(学生の頃は一緒にガルネリウスとかやりました)、昨今ではいろいろなところに手を伸ばすおじさんになられているご様子だったので、これからも機会があればお願いしたいなあというのをこの場をお借りしてお伝えします。
個人的な制作に関する部分
ギターなんですが、前述通り半々ぐらいで僕が弾いてます。左チャンネルで鳴ってるバッキングが僕のやつです。
これは元々この曲全部僕が弾く予定で「よっしゃそれならギター新調すっか」って夏に買ったジャズマスターがあって、難しいパートは弾けないけどこれで鳴らしたパワーコードのバッキングはどうしても入れたい!っていう発想の結果、前述のようなパート分けをさせていただくこととなりました。
イントロにため息(深呼吸)を入れたのは、歌詞中のキャラクターからしたらこんな辛い内容歌いだしたくないだろうな~と思って、ため息の一つでもあったら情感出るんじゃなかろうかと入れた次第です。そういうこともあり、いい感じに震えてるのを採用しました。この部分の収録は、スタジオの残り時間が少ない中で、ろくに説明もせず「しーちゃん!ため息!ため息して!」って録ったのが思い出深いです。
あと楽器隊が急に入るところ(0:16-)に関しては、オアシスのワンダーウォールの入りが好きなので真似しました。
もうひとつ、2サビ前で静かになる→止まる→ガーンって入るところ(1:38-)は委員長のソロ曲が頭から離れなくて似たような感じにしました。
#5 End Credits
この曲に関しては、ほぼほぼなまおじさんのご提案によるものです。
元ネタとしては、韓国アーティストとして初のフジロック出演を果たしたこともあるポップユニット"Peppertones"が、アルバム"High Five"で同じようなことをされており、それをなまおじさんのソロギターで再現させていただいた具合です。
今回、図らずも多くの方のご助力を請う形となったので、そのタイミングでこういった試みができたのは、嬉しいめぐり合わせだなあと感じています。
総括
5作目ですが、初めてのことのいっぱいあり度は1作目並だったなと思います。
魚アシ自体、全部ひとりで好きなように作りたい!って思いから始めたようなものなので、こういう作り方をすることになろうとは正直思ってもみませんでした。アイデアを持ち寄ってひとつのものにしていくということも長らくしていなかったので、とっても刺激的だったと思います。
また、自分で作ってないので2,3曲目は解説しませんでしたが、本当に本当にいい曲でして、制作側としては「しーちゃんの声の活かし方こんなんもあるんや 真似しよ」という発見があったりもしました。
手前味噌に聞こえてしまうと恐縮ですが、人と人との関係性とか、向き合い方とか、そういったものを大事にすることを今一度思い直せるようないい作品にできたと思います。
以上です。
最近寒かったり暖かかったりしてアレなので、みなさんも体調にお気をつけください。
約一年ぶりのブログ稼働でしたが、来月はこれに参加することにしてしまったので、期待せず期待していただけますと幸いです!
*1:"Why don't you eat MONACA? vol.2” および ”M3MOタクコンピ「1.5(next..?)」"
*2:2019/11/20 沖井礼二ツイッターアカウントより https://twitter.com/okiireiji/status/1197155907693465602